「地域のお店」デザイン表彰は、見た目の良さだけではなく、お客様との関係づくりや地域貢献など、広い意味でのデザインという観点から、魅力と個性にあふれた個店を表彰する制度です。受賞店は、登録店中でも特にハイレベルなお店です。サイトを見るだけでなく、ぜひ実際にお店に行ってその良さを体感してください!
伊豆半島の端に位置し、のどかな里山の風景。ここを目的地に遠方からわざわざ訪れる方もいるほど、訪問する価値を感じさせてくれるお店です。店舗にしている古民家は、江戸時代天保年間、今から185年前の建物を移築・再建させたもの。高い天井に、むき出しの梁、それになじむように季節の野の花やアンティークの調度品が空間を彩ります。
季節の移り変わりを感じながら、落ち着いた雰囲気の店内では、店主の鈴木海(すずき かい)さんが揚げたての天ぷらを提供してくれます。食材のストーリーを説明しながら一品ずつ、一番おいしいタイミングで目の前に持って来てくださり、最高の状態で食べることができます。「天ぷらは野菜そのもの味、香りや旨味を引き出し、よりおいしく召し上がっていただける」と話します。
食材は近所の農家さんと一緒に試行錯誤しながらより良い物になるように研究を重ねているそうです。身近なお野菜が、こんなにもおいしいご馳走だと気づかせてくれるお店です。
住所 | 〒415-0313 静岡県賀茂郡南伊豆町一色185-2 |
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TEL | 0558-62-5310 |
営業時間 | 11:30~14:30(予約優先)、夜は完全予約制 |
定休日 | 水曜日、他 |
※令和2年3月現在休業中
オーナーからのメッセージ
染め、織り、糸紡ぎ、フェルトなど、もの作りが好きな子供から大人までが楽しめる場所です。店内には、カラフルな糸立てやフェルトがたくさん並び、創作意欲を掻き立てるような空間。
作りたいものに合わせてその場で作れる体験講座やプログラムの開催のほか、手作りの材料・キットを販売しています。糸は、繊維会社から余った糸を仕入れているものもあり、他では見かけない種類のものも。
「1gから欲しい分だけを購入できます。こういった販売方法をしているお店は、静岡でも珍しいと思います」と代表の稲垣有里(いながき ゆり)さんは話します。織り機も数台置いてあり、マフラー、ストール、バッグなど初心者でも織物に挑戦できます。
染織家でもある稲垣さんは、海外での個展やルワンダでの織物指導経験があり、グローバルな視野をお持ちの方。個性的なアイデアも生まれそうです。「今後はキットの準備を充実させたい」とのこと。今後の展開が楽しみです。
住所 | 〒420-0852 静岡県静岡市葵区紺屋町3-2 服部B1F |
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TEL | 090-3587-1596 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
定休日 | 日曜日、月曜日 |
オーナーからのメッセージ
審査員からのコメント
- 審査委員
- ひびのこづえ
全面ガラス張りの店舗正面から見えるカラフルな糸が楽しさを演出しています。同店をオープンする前に稲垣さんがルワンダに行って、現地の女性に織物を教えた体験談は大変面白く、業として作品を作る真剣さは日本でも必要なことだと思いました。稲垣さんの、染織・手芸教室を通じて都市が抱えている人間関係の空洞化を変えようとしている姿がすばらしいです。地域に密着したお店づくりを進めることは大変ですが、今後の展開に期待しています。
ドイツ製のオーブン、ミキサー、製粉機を導入し、本場ドイツで研修してきた知識と経験を元に作るドイツパンが評判。オーブンはガス焼きのものにこだわり、「ともかくおいしく焼ける」と店主の杉山大一(すぎやま だいいち)さんは話します。
お店にはドイツパンのほか、フランスパン、イタリアパン、日本のパンなど多種多様。実は、伊豆の国は日本のパンの発祥の地だそう。パン祖である江川太郎左衛門英龍の功績を称え、毎年1月第3週頃に「パン祖のパン祭」を開催しています。杉山さんは、このお祭りの発起人でもあり、2019年で13回目を迎えました。「全国高校生パンコンテスト」の開催、県内の学校や台湾でのパン作りの講師、製粉会社のパン開発協力など、パンの普及活動にも積極的です。
年に一度はドイツへ赴き、一週間かけて全土を巡り、ドイツパンの流行、製法、機械などの情報を得てくると言います。「パン作りを始めて30年。今でもまだまだ修行中。常に上を目指していきたい」と話してくださいました。
住所 | 〒410-2321 静岡県伊豆の国市三福637 |
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TEL | 0558-76-8777 |
営業時間 | 平日10:00~18:30、土・日曜日・祭日10:00~16:00 |
定休日 | 日曜日不定休、祭日の月曜日 |
オーナーからのメッセージ
審査員からのコメント
- 審査委員長
- 指出 一正(さしで かずまさ)
中世のドイツの建物をイメージした外観と、気軽に立ち寄れる、地域に開かれた感じがマッチしていて良かったです。お客様のニーズと店主のこだわりのバランスが絶妙で、とてもおいしいドイツパンでした。「パン祖のパン祭」で「全国高校生パンコンテスト」を開催し、実技会場として店舗を提供しており、後進を育てたり、食育に精力的に取り組んだりしている姿勢がすばらしい。コンテストを通して高校生に仕事を伝える社会性も評価できます。
県立美術館周辺はハイセンスなお店が多いエリア。この地にオープンした「Nicraic」は、フランスの精肉店をモデルにした他に類を見ないような素敵なお店です。
店主である鈴木正行(すずき まさゆき)さんをはじめ、奥さま、娘さんたちでお店を切り盛りしています。精肉はもちろん、肉料理からお惣菜、お弁当、パティシエだった娘さんが作るキッシュも評判。付け合わせからドレッシングに至るまで全て手作りです。
豚肉は富士宮の「TOPICS」から、牛肉は東京の「日山畜産」からと、顔が分かる生産者からお肉を仕入れています。銘柄やランクを鵜呑みにせず、本当においしいものを追求し、販売しています。「お肉は生き物。常に勉強が必要だと思っています。今後もいろいろな肉料理の提案と、分かりやすい値段で、おいしいお肉を提供したいと考えています」と話します。
生産者の情報やストーリーをお客様へ伝え、また、お客様からの声を生産者へ伝えるなど、関係づくりも大切にしているお店です。
住所 | 〒424-0887 静岡県静岡市清水区谷田8-1 1F |
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TEL | 054-348-4129 |
営業時間 | 10:00~19:00 |
定休日 | 月曜日、第3日曜 |
オーナーからのメッセージ
審査員からのコメント
- 審査委員
- 兒玉 絵美(こだま えみ)
フランスの精肉店をモデルにしたお店は、お肉屋さんとは思えない、おしゃれで素敵な造りになっており、確かな目利きで良い品が揃っています。精肉店に40年ほど勤めていた鈴木さんの、「いつか自分の精肉店を持ちたい」という夢を叶えるため、3人の娘がそれぞれの得意分野を生かし、お父様のために力を合わせてお店をオープンしたことがすばらしい。家族で生き生きと働く姿を拝見し、専門店、継業、そして家族経営の新しい形であると感じました。
カフェの入り口は4つのドア。それぞれ扉にまつわる物語が刻まれています。初めて訪れた方は驚くこともありますが、スタッフとの交流や笑顔が生まれます。
店舗デザインは建築家の長坂常(ながさか じょう)さん。本棚にはブックディレクターの幅允孝(はば よしたか)さんが選書した500冊以上の本が置かれた開放的な空間です。移転開業に際しては“みんなでつくる”をコンセプトに、地域のお客様と椅子や本棚、照明カバーなどを製作しました。開業後も地域の講師をメインに、様々なワークショップが開催されています。
電源付きのカウンター席、大きなテーブル、ペット可のテラスなどがあり様々な利用が可能です。店主の狩野宏美(かのう ひろみ)さんは、「私自身も母親の視点を持つようになり、ベビールームを作るなどお店に変化を加えています。今後は私たちのおいしい記憶を基点に、メニューやワークショップなどのショップコンテンツを通じ、情報交流の盛んな地域のカフェになるよう努力していきたいです」と語ってくださいました。
住所 | 〒410-0058 静岡県沼津市沼北町1-14-26 |
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TEL | 055-922-3910 |
営業時間 | 11:00〜22:00 (土・日曜日・祝日 17:00まで) |
定休日 | 月曜日、第3火曜日(祝日営業、翌営業日休み) |
オーナーからのメッセージ
審査員からのコメント
- 審査委員
- 繁田 和美(しげた かずみ)
お店づくりの方向性が明確で、店主の想いが店内のあちらこちらから伝わってくるお店でした。巻き込み上手で、参加させ上手な、狩野さんは、協力者やお客様との縁を上手につくっています。特に、お客様視点で「どんなお店に行きたいか。どんなものを食べたいか。」を常に考え実行することは、なかなかできないですし、「地域に欲しいカフェはお客さんも一緒につくろう!」という潔い言葉から新しいお店の形を感じました。