大賞
柚野商店
地域の生活を支え、豊かで持続可能な暮らしを提案するまちの商店
柚野商店は、富士宮市(旧芝川町)の山間部、柚野地区にある唯一の商店です。前身店舗の閉店が決まり、地域から商店がなくなりそうな中で、平野映子(ひらのえいこ)さんが「地域で愛されてきたお店であり、これまで自分もお世話になってきた」と第三者承継を決意。「地域のお店」であるとの思いから「柚野商店」と名付け、地域の女性たちとともに新たにオープンしました。
木のカウンターや一面に木材を使った壁など自然素材のものがまず目に留まる店内には、お菓子、野菜、惣菜、生活雑貨からお酒、たばこまで幅広い商品がそろっています。地域の一人一人の生活に必要なものを尊重しながら、お客様が暮らし方の選択肢を増やすことができるよう、健康や環境に配慮した商品や買物の仕方などの提案もしています。この提案の1つが「量り売りコーナー」。調味料、スパイス、乾物など約100種類が並び、自分に必要な量だけのちょうどよい買物ができます。量り売り商品購入用の持参容器を「柚野商店セット」として車に常備している方、こんぶやドライフルーツなど量り売り商品で端数調整しておこづかいを使い切る子どもたちなど、地域に浸透しています。
キャッチコピーは「人と暮らしをつむぐ」。前オーナーと現店主、地元の住民と他の地域の人たち、生産者と消費者、自然の営みと人間の暮らしなど、様々な人・ものがつながり交わるその輪の中心に、柚野商店が存在しています。
入店してまず目に入る場所に量り売りコーナーは設置されています。平野さんが自身のお店を持つに当たり、「自分のやりたいこともここで形にできる」と取り入れました。お持ち帰り用のリユースの瓶も用意しています。
地元木材を使って改装した店内は、商品棚にもタンス、リンゴの木箱など「土にかえる」素材の物を可能な限り活用しています。多種多様な商品が平野さんのセンスで工夫を凝らして配置されている、「たから箱」のようなお店です。
地元のもの、手作りのもの、安心・安全なものを提供することを意識しながら、これも選択肢の1つとして、メーカーの製品や加工品も取り扱っています。手作りのお団子と駄菓子が共存しているお店です。
お店からのメッセージ
店主平野 映子さん
指出 一正(さしで かずまさ)
地域の未来をつくる思いにあふれているお店です。個人商店の継業、人口減少への対応、お店そのものが居心地のよいコミュニティとなっていること、地域内外の人たちに対しよく開かれていること、次世代とも関わりを生み出していることといった、今、お店に求められる要件を満たし、地域とお店とのあるべき方向性が見えました。
また、外観、内観がいずれも地域の風景とともにあり、存在そのものが美しいお店です。特に、不要品を上手にアップサイクルして活用した内装は、機能性と華やかさを兼ね備えています。
店舗情報
- 所在地
- 富士宮市大鹿窪208-8
- TEL
- 050-3131-7444
- 営業時間
- 10:00-18:00
- 定休日
- 日曜日・祝日
優秀賞
茶の庭
茶業界を元気に!!生産者の視点でお茶の魅力を発信
製茶会社が運営するお茶のshop&cafe 茶の庭。同時に「茶の庭」は、お茶のブランド名でもあります。店主の佐々木余志彦(ささきよしひこ)さんは、お茶の消費量が減り、生産者も専門店も少なくなる現状から、産地だからこそのお茶の新しい販売方法や商品展開をする必要性を感じ、発信力を高めるためのブランドとして「茶の庭」を立ち上げ、「茶の庭」の店舗を高齢を理由に使われなくなった田んぼの跡地に建てました。
茶葉は、従来の摘み取り時期の違いによるスタンダードシリーズに加え、品種、焙煎、ブレンドなどによる味の違いが楽しめる茶の庭シリーズを新しく展開。ショップで試飲をして好みの茶葉を選ぶことができます。パッケージも従来の自家用からギフトにしたいと思ってもらえるようなデザインを取り入れました。オリジナルの急須やマグカップ用茶こしなどの茶器、お茶に合うお菓子、お茶を使ったお菓子の販売、カフェではスイーツ、ドリンクなどを提供しています。
カフェの窓やテラスから広がる景色には四季折々の自然を感じられます。また、お茶の植樹体験や茶摘み体験も行っており、植樹したての若いお茶の木から“かまぼこ型”の茶畑まで生長具合の異なる様子も眺めることができます。
茶の庭では、生産者の笑顔を守り、幅広い世代に「お茶っていいよね!」を届けるため、伝統と革新の両方をそれぞれ商品に表現するとともに、新しい発見を体感できる体験を提供しています。
茶畑の中のピクニックテーブル。気持ちいい風の中、里山の景色を眺めながらゆったりとしたお茶の時間を過ごすことができ、隣接する製茶工場からの焙煎の香りに癒やされます。
スタンダードシリーズと茶の庭シリーズ、ティーバッグ、和紅茶、ハーブティーなど豊富なラインナップ。試飲して好みの味と香りのお茶を選ぶことができます。
カフェでは、抹茶ラテ、季節のプリンなど若い世代もお茶に親しめるメニューを提供。ショップでは、ようかん、クッキー、フィナンシェなどお茶を使った和洋菓子に、お茶に合わせて食べたいおせんべいなどを販売しています。
お店からのメッセージ
店主佐々木 余志彦さん
兒玉 絵美(こだま えみ)
茶農家の協同組合として発足し、地域の農家とともに力を合わせてこられたところが印象的です。茶農家、茶の消費量が減少している現状で、茶産業・文化を守るため、様々な取組に挑戦されています。
周辺の茶畑、里山の風景を借景として上手に取り入れている素晴らしい設計は生産者ならではの視点です。同時に、店舗デザイン、商品づくりも生産者の視点が随所に活かされていることで「お茶っていいよね」というコンセプトや思いが強く伝わってきます。
店舗情報
- 所在地
- 掛川市上内田389-1
- TEL
- 0537-28-7077
- 営業時間
- 10:00-18:00
- 定休日
- 無し(年末年始休業日有)
特別賞(サステナブルデザイン賞)
萩原こうじや
家族の思いを一つに、伝統+新感覚でつなぐ手作りのこうじ
旧東海道岡部宿の街道沿いにある萩原こうじやは、創業明治23年、現在は6代目の萩原伸明(はぎわらのぶあき)さんが店主を務めています。
2020年、店舗の老朽化を受け、存続か廃業かの岐路に立ちました。当時は、5代目の猛(たけし)さんが1人で切り盛りしていました。こうじ作りの大変さを知る伸明さんは、廃業を考えましたが、次女 優奈(ゆうな)さんの「私が継ぐ!」、奥様 美子(よしこ)さんの「明治から続いてきたお店を閉め、このおいしいこうじがなくなるのはもったいない」との言葉、さらに地域の方やお客様からの要望もあり、6代目として店を継ぐことを決断しました。
老若男女問わず誰にでも足を運んでいただくことを目指し店づくりをしています。店舗は、こうじやらしくぬくもりのある木を使用し、街道の景観に合う雰囲気に、入ってみたいと思えるお店をイメージして改装しました。また、入口につながる部分にスロープと手すりを設置し、足が弱くなった方やベビーカーの子ども連れの方も安心して来店いただけるようになりました。
こうじ作りは、伸明さんと猛さんの担当。昔ながらの伝統製法による手作業を妥協せず、愚直に続けています。こうじそのものの販売のほか、こうじを使った商品の開発も積極的にしています。こうじ発酵食品作り、接客担当は、美子さんと優奈さん。小さいお店だからこそ、お客様一人一人とのコミュニケーションを大切にしています。家族の気持ちを1つに、伝統あるこうじを未来につなげています。
杉のこうじ蓋、菰、石臼など道具も昔からのものを大切に使っています。
130年以上守りつないできた技術で、手間暇惜しまず、手作りしているこうじ。お米に花が咲くようにコウジ菌が生えます。
以前からの甘酒、みそに加え、塩こうじ、コチュジャン、発酵あんこ、甘酒ドリンクなど新感覚のこうじ発酵食品・調味料・ドリンクを開発。また、これら商品を使った料理教室や味噌作り教室などを行い、こうじ文化を広めています。
お店からのメッセージ
店主萩原 伸明さん
ひびの こづえ
木の道具や石臼など昔ながらの自然の道具を大切に使い、代々続く技術を守っていらっしゃいます。良いものを途絶えさせないとの思いをもって、伝統製法により丁寧なこうじ作りをされ、シンプルでおいしいものを提供されています。さらに、こうじを使った新しい商品も開発されています。また、料理教室の開催等、食文化を未来に橋渡しする取組も素晴らしいです。
継承していくことの重要性を強く感じました。御家族が一丸となって取り組まれている姿勢が良いですね。
店舗情報
- 所在地
- 藤枝市岡部町内谷94-2
- TEL
- 054-667-0107
- 営業時間
- 9:00-17:00(木曜日のみ9:00-18:30)
- 定休日
- 日曜日・月曜日
特別賞(ローカルフード賞)
Vieni KANDA
伊豆の恵みたっぷり みんなに優しく、おいしいイタリアン
Vieni KANDAは、オーナーシェフの神田哲弥(かんだてつや)さんが、野菜・肉・魚と豊富な食材に恵まれた伊豆に魅力を感じ、修善寺駅近くで営むグルテンフリーのイタリアンレストランです。哲弥さんは、ピザ職人時代に小麦アレルギーを発症しました。当事者として同じように困っている方の助けになりたいと、小さい頃からの夢である自分の店をグルテンフリーのイタリアンで実現することを決意。周りからはニーズがないなどの意見もありましたが、「誰もが安心して食べられるものを提供する」との強い意思で、無添加、有機栽培など調味料にもこだわり、グルテンフリーの料理のみを提供しています。「グルテンフリー=おいしくない」のイメージをくつがえすため、開店に向けた準備期間にグルテンフリー食材を片っ端から試作。誰にとってもおいしい料理を追求しています。
おいしい料理に欠かせない地元食材は、準備期間に働いていた近隣農園などつながりのある生産者から仕入れるほか、自治会活動を通して知り合った近所の方の作る無農薬野菜、伝統野菜なども使っています。食材の特徴、料理のポイントなどを哲弥さんからお客様に積極的に伝えるようにしています。
Vieniは「こっちこっち!おいで!」というイタリア語。お客様が入りやすい、親しみやすいお店を目指し、空き店舗を奥様の朝未(あさみ)さんと2人でDIYしました。手づくりのお店には温かさがあふれています。
小さな子どもでも安心して食べられる、体にやさしい料理の提供を心がけています。グルテンフリーに興味のない方にもおいしく、魅力ある料理を提供しています。
伊豆の恵みが詰まった一皿。良い食材をたずねて、生産者や地元の方、同業者などに自ら出向いてつながりをもっています。
カウンター上の黒板いっぱいに手書きのメニュー。旬の食材、新しい食材を使って、また、お客様のリクエストに応えて、常に新しいメニューが登場します。
お店からのメッセージ
店主神田 哲弥さん
指出 一正(さしで かずまさ)
店主ご夫妻の自分たちらしさや親しみやすさが表われたお店で、一品、一皿に対して、お客さまの喜びや健康、幸せを気づかった優しいデザインと提供がなされています。
また、自治会の班長として積極的に地域に入り、お店の営業においても地域とそのコミュニティを尊敬している姿勢が見え、素晴らしいです。
多文化共生への対応の重要さが増していくなか、グルテンフリーにとどまらない活躍が期待されます。修善寺を若い力で、おいしい食から盛り上げていくことができる大事なお店であると感じました。
店舗情報
- 所在地
- 伊豆市柏久保631-1
- TEL
- 0558-73-2500
- 営業時間
- 11:00-15:00、17:30-21:30
- 定休日
- 日曜夜・月曜終日・火曜昼
特別賞(プレイスメイキング賞)
cafe flat
flatを軸に、町、人とのつながりで作られる「みんなのバショ」
森町の新しい住宅が建ち並ぶ道を進んでいくと、ぽっと現れるお店がcafe flat。“フラット”な建物、“ふらっと”立ち寄れる、居合わせた人が“フラット”に話せる・・・店主の澤井(さわい)いづみさんが色々な“フラット”の実現を目指しているお店です。
森町の出身でも在住でもない澤井さんが、森町に足を運ぶようになったきっかけは御主人の趣味の自転車。訪れる機会を重ねて知り合いが増え、人々の距離感やお店の人の顔が見えることに心地良さを感じて出店を決めました。下水道が整備されるまでの時間を活用し、オープンに先駆け、ガレージでコーヒーとかき氷の販売、Instagramでの情報発信を始め、徐々に地域の方々に認知されていきました。
店舗コンセプト“flat”を軸に、地元のデザイナー、大工、地域おこし協力隊等とアイデアを出し合ってデザインを作り上げました。店舗のリノベーションでは、地域の方々にお店への親しみを持ってほしいと考え、店内の壁のしっくい塗りをワークショップ形式で実施。その壁に飾られているドライフラワーは友人の手作り、黒板には地元の学生のチョークアート、カウンターには近所の方が作るアイシングクッキーなど、澤井さんがつながった様々な人たちがお店づくりに関わっています。
保育園給食の調理経験を通し「食べたものが体をつくる」ことを実感した澤井さん。健康につながる、安心して食べられる食事とおやつの提供を心がけています。
生ゴミの処理にコンポストを活用。このコンポストは、環境の再生、循環する暮らしをつくる地元の造園屋が扱うもの。澤井さんは自宅でも使用し、その良さを広めたいとガレージに展示もしています。
コロナ禍では開放的な空間で気兼ねなくおしゃべりを楽しんでもらえたガレージ。今では定期的にガレージ出店を行ったり、講座を開催したりと、人々が集う場所として提供しています。
車イスを使用している知り合いの協力を得て設置したスロープや、店外のトイレなど、誰もが過ごしやすいよう動線が考えられています。
お店からのメッセージ
店主澤井 いづみさん
繁田 和美(しげた かずみ)
店主の人柄のような温かい雰囲気や店の佇まいは、誰にも開かれ、誰もが入りやすく、居心地の良さとなっています。
特に、近所の子育て世代が行きやすく、働きやすく、関わりやすいお店です。
「“cafe flat”をつくりあげていく仲間」のような地域との関係ができており、店づくりの関係者との距離感も良く、評価できます。
また、御自身も活用され、気に入ったことからコンポストを勧めていることも良い活動です。
店舗情報
- 所在地
- 周智郡森町天宮1534
- TEL
- 090-2260-3355
- 営業時間
- 10:00-17:00
- 定休日
- 月曜日・火曜日・第1日曜日