「地域のお店」デザイン表彰は、見た目の良さだけではなく、お客様との関係づくりや地域貢献など、広い意味でのデザインという観点から、魅力と個性にあふれた個店を表彰する制度です。受賞店は、登録店中でも特にハイレベルなお店です。サイトを見るだけでなく、ぜひ実際にお店に行ってその良さを体感してください!
お茶関連の事業所が集まる静岡市茶町通りで、茶問屋の直売部門として県内産のお茶やお茶を使った自家製菓子を販売しています。看板商品は抹茶入り生クリームを包んだ「茶っふる」。統一ロゴの活用、地元デザイナーによるパッケージデザインなど、ブランディングによりお店のイメージを確立しています。
日本茶インストラクターである店主の前田冨佐男(まえだ ふさお)さんは、お茶という「モノ」の販売から「安らぎ」「くつろぎ」といった「コト」に着目。11種類のお茶が無料で試飲できる2階のイートインスペースでは、お茶に関するセミナーや様々なイベントが開催され、お茶の情報発信基地兼人々の交流の場となっています。
また、前田さんの目は地域にも向けられ、「しずおか茶の町コンシェル」を設立。仲間と共に散策マップの作成などで茶町に人を呼び込んでいます。
住所 | 〒420-0018 静岡県静岡市葵区土太夫町27 |
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TEL | 054-252-2476 |
営業時間 | 9:30~18:00、日曜・祝日10:00~17:00 |
定休日 | 水曜 |
子育て中の店主新海智美(しんかい ともみ)さんが「子供が安心して食べられるお店を」と始めた、手作りにこだわったお店です。デザイン事務所に依頼した店舗デザインやかわいらしいロゴは、モダンでありながらも居心地の良い空間の演出に大きな役割を果たしています。
常時10種類以上の惣菜がショーケースに並び、テイクアウトのほか、3~5品を選んでご飯やお味噌汁などとセットにして店内で食べることもできます。安心安全を心掛け、食材は肉や魚、出汁に至るまで地元の仕入先を優先し、厨房もお客さんから見渡せるようにしています。
店先には地元産の野菜を販売するスタンドを設置。近くの学校の運動会や地域イベント時の仕出の注文も多く、「地元の台所」として親しまれています。
審査員からのコメント
「お母さんの厨房」をテーマにした店舗はどこか懐かしく温かい雰囲気です。飲食店での調理経験を持つ店主の新海さんが手掛ける料理の味付けや彩りは、家庭では真似できないもので、地域の人々に豊かで安全な食を提供しています。さりげなく置かれた膝掛け、季節に応じたディスプレイなど、隅々にまで感じる女性らしい心遣いも居心地を良くしている理由だと思います。
住所 | 〒418-0034 静岡県富士宮市黒田286-6 |
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TEL | 0544-23-0781 |
営業時間 | 11:00~16:00 |
定休日 | 土、日、祝、※火は弁当配達のため店舗は休み |
清水駅前銀座に店を構えて70年、風情ある佇まいの「次郎長屋」。昔ながらの鰹節削り器や、量り売り用のレトロな黒い味噌樽が目を引く同店は、昆布や漬物、佃煮など「にっぽんの味」を今も変わらず提供しています。ビジュアル・マーチャンダイジングを取り入れた売場づくりや、学生によるコンサルティング事業への参画など、進化を続けているお店でもあります。
店主の西ヶ谷建志(にしがや けんじ)さんが大事にするのがお客さんとの会話。「毎月楽しみにしているよ」という声を励みに毎月発行しているかわら版は、親しみやすいよう手書きにこだわり、高齢者の方でも読みやすいように文章の量やレイアウトにも配慮しています。また、精力的に出汁取り教室を開催するなど、和の食文化を地域の次世代の人たちに伝える努力を続けています。
審査員からのコメント
老若男女に愛されるお店であり、お客様1人1人と丁寧に関わっている点を高く評価しました。お年寄りが来店したら、ゆっくり滞在してもらうよう会話を大切にしていたり、10年以上毎月続けている手書きのかわら版によるやり取りは、何度も訪れたくなるお店の魅力にそのままつながっていると感じます。和食文化を地域や次世代に伝えていく姿勢も素晴らしいと感じました。
住所 | 〒424-0816 静岡県静岡市清水区真砂町4-9 |
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TEL | 054-367-0557 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
定休日 | 水曜 |
「昔ながらの八百屋 本陣」は、創業80年、地域に根を下ろす老舗です。平成28年の改装では、自然な環境の中で野菜を販売したいとの思いから、「パッシブデザイン」の技術を取り入れた設計を行い、見た目・機能性ともに優れたお店となっています。店内には、地物中心の新鮮な野菜・果物が並び、開業時から続く糠床で漬けたお漬物と手作りのお惣菜も人気。
お客さんとの間には「今日のおすすめは?」「こうするとおいしく食べられるよ」といった会話が飛び交い、活気にあふれています。野菜・果物をかたどったユニークな被り物を作ったり、ロボットのペッパー君がお客さんをお出迎えしたり、料理教室を開催したりと、積極的にお客さんとコミュニケーションする姿勢がまた来たくなるような明るい雰囲気を作り出しています。
審査員からのコメント
まちから八百屋が消えていく中、地域と深く関わりながら、小売りだけで頑張っている点を高く評価しました。昔ながらの風情を残しながら、木材を多用した温かみと清潔感ある店内やSNSによる情報発信など、現代に合わせたお店づくりは他店のヒントになると思います。何より店主の村松由夏子(むらまつ ゆかこ)さん自身が、被り物など楽しみながらやっている点が繁盛店の秘訣であると感じました。
住所 | 〒426-0071 静岡県藤枝市志太3丁目2-22 |
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TEL | 054-641-0693 |
営業時間 | 9:30〜18:00 |
定休日 | 日曜・祝日 |
終戦直後、子供たちの教育のためには紙と鉛筆が必要であるという考えのもと開業したマルウチ文具店が、平成26年、赤レンガ造りの「ペンをこよなく愛する文房具屋 Penne19」にリニューアルしました。その名のとおりペンの品揃えが豊富で、特に万年筆やインクが充実しています。地元の店舗専門デザイン事務所と造り上げたお店は、煉瓦造りの外観と古材をふんだんに使った内装で、レトロとモダンのバランスが絶妙。ペン専門店としての雰囲気を醸し出しています。
2階には古い文具やオルガンを配したセルフカフェスペースを設置。地元アーティストに開放して様々な教室を開催したり、岳南電車とのコラボ商品を販売するなど、地域とのつながりを大切にしています。
審査員からのコメント
単に商品を売るだけでなく、「書く」ことへの愛情を膨らませてくれる、楽しい場所を築いていると感じました。2階では、買ったものをその場で使いながら、自分や大切な人へ想いを綴りたくなる雰囲気があり、2020年の自分に手紙を送るポストの設置など、心に響く試みをしています。変化しながらもまちに根ざして伝統を保っていることを高く評価しました。
住所 | 〒417-0051 静岡県富士市吉原3-4-5 |
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TEL | 0545-57-0080 |
営業時間 | 9:30〜18:30 |
定休日 | 火曜日 祝日の場合も同様 |
紙バンド手芸を楽しめるクラフトスペースとカフェが併設されたお店です。ドアを開けるとまず目に飛び込むのは100色以上もある色とりどりの紙バンド。季節に合わせたディスプレイはもちろん紙バンド製で、モダンな店内にカラフルな雑貨を置くことで、若い世代にも訴求する内装としています。初心者でも安心して作品を作ることができるよう、キットが用意されているのも魅力の一つです。
紙のまち富士市では、女性達が日常的に紙バンドを使い、かごや小物を作っていました。その文化を発信し若い世代にも広めたいという思いからオープンした同店では、手芸を通してお客さん同士の交流も生まれています。また、カフェスペースでは、ご当地グルメ「つけナポリタン」も提供し、地域の魅力を発信しています。
審査員からのコメント
地元の特産品である「紙」を意識した特色あるお店です。中央に大きな作業テーブルがあり、楽しく作品づくりができる場所として、またカフェとして、地元の人たちの良いコミュニティスペースになっています。編む作業は単純でも、「かご」など、出来上がった作品に感じる愛着が、紙のまち富士市への愛着を生むことにつながっていると思います。
住所 | 〒417-0051 静岡県富士市吉原4-2-2 |
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TEL | 0545-55-5811 |
営業時間 | 9:00〜18:00 |
定休日 | 水曜 |
カカオからチョコレートを自ら作って販売する全国でも珍しいチョコレート専門店です。お店の特色が伝わるよう素材感を活かしたデザインで、木のぬくもりを感じるシンプルで明るい店内は、壁一面が黒板になっており、チョーク・アートのかわいいイラストでチョコレートの作り方や産地を理解することができます。チョコレートをベースにしたドリンク・スイーツを楽しめるカウンターや試食コーナーでは、カカオの品種や産地ごとに異なる風味を実感しながら自分好みのチョコレートを選ぶことができます。
まだ若い店主の田中克典(たなか かつのり)さんがIターン起業して平成27年12月にオープンした同店は、静岡産のミカンや和紅茶を使用した商品開発など地元とのコラボにも積極的に取り組み、着実にファンを増やしています。
審査員からのコメント
若い経営者が夢を持ち、静岡で魅力的なお店を開業した点を高く評価しました。トレーサビリティにも配慮しています。機械工学を学んでいた店主の田中さんが、チョコレートへの興味と、カカオの殻を取る機械の開発という2つのアプローチから専門性を追求したオンリーワンのお店づくりに成功しています。地域に新しく、未来を向いたかっこよくておしゃれな仕事と場所を生み出した好例です。
住所 | 〒422-8034 静岡県静岡市駿河区高松1丁目26-15今井ビル1F西号 |
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TEL | 054-374-8551 |
営業時間 | (平日)13:00〜17:00(土日祝)11:00〜18:00 |
定休日 | 月・火 |
手作りケーキが人気の洋菓子店です。店主の太田亜美(おおた つぐみ)さんは、世界的な料理学校「ル・コルドン・ブルー」ロンドン校で学び、イギリスやフランスで味覚を鍛えた本格派。その実力は口コミサイトのベストスイーツNO.1という評価に表れています。県内産の無農薬抹茶や藤枝市産のレモン・紅ほっぺなど地元食材も多く取り入れながら多彩な商品を展開。ケーキ同様、店内もヨーロッパ風の洗練された趣味にあふれています。
また、太田さんは自身の子育て経験をもとに、子供連れでも気兼ねなく人気店での買い物を楽しんでほしいと、選りすぐりの個店を集めた青空マルシェ「ボンマルシェフジエダ」を主宰し、地域で支持される個店の魅力発信にも貢献しています。
審査員からのコメント
色とりどりのケーキやパイ、静岡県をかたどった抹茶クッキー、マドレーヌの型の装飾や泡立て器の形をしたドアノブ、アンティーク調の什器やケーキスタンド。細部にまで凝り、イギリスやフランスの世界観が広がるハイセンスなお店です。店舗づくり・商品づくりもレベルが高い上に、さらにマルシェまで主宰してしまう太田さんのパワフルさに脱帽しました。
住所 | 〒426-0061 静岡県藤枝市田沼3-1-37 |
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TEL | 054-637-2818 |
営業時間 | 9:00~19:00 |
定休日 | 火曜日 |
江戸時代から続く伝統織物「遠州綿紬(めんつむぎ)」の生地や雑貨をメインに扱う「ぬくもり工房」。店内は天竜杉を使用し、名前のとおりぬくもりある雰囲気と吹き抜けの解放感ある空間が広がります。
同店は、家業の繊維卸売業を継ぐために地元に戻った大高旭(おおたか あさひ)さんが、平成25年に遠州綿紬の販売店としてオープンしました。大高さんは、遠州綿紬の伝統を守りながらも、徹底してブランディングにこだわり、現代に合わせた新しいスタイルのオリジナルブランド「つむぐ」を創設。今では旅館や百貨店などからの引き合いも多く、ハンカチは生産が追いつかないことも。2階に併設されたギャラリーでは、地元作家の作品も展示販売しています。伝統産業の維持と開発に意欲的で、担い手が減少している縫製にも取り組み始めています。
審査員からのコメント
伝統産業である遠州綿紬を、新しい視点で復興・発信している点を高く評価しました。更に単なる復興に留まらず、旅館や百貨店に採用されるなど、商品の評価や価値を上げていることも素晴らしいと感じます。「製造の泥臭さや、産業の裏側にある背景」を魅力として伝えたいという店主の大高さんの思いが形になっており、個店と伝統産業の新しい関係性は大きな可能性を秘めていると思います。
住所 | 〒434-0046 静岡県浜松市浜名区染地台3-12-25 |
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TEL | 053-545-6391 |
営業時間 | 10:00~18:00 |
定休日 | 水曜日 |